20世紀最高の種牡馬とも言われるノーザンダンサー。
後継種牡馬にもずらりとリーディングサイアー級が並ぶんですが、中でも頭一つ抜けた実績を上げたのが英愛リーディングを通算14回も獲得したサドラーズウェルズでしょう。
このサドラーズウェルズもやはりと言うか、御多分にもれず超エリート一族の出身でございます。
例えば同じノーザンダンサーの後継種牡馬であるヌレイエフ。
ヌレイエフとサドラーズウェルズは親戚の間柄です。
そのほかにも名馬がずらりと並びますが、何と言ってもこの血統のスゴイところは、この血をクロスで重ねていって子孫が大発展しているところ。
今回はそんなサドラーズウェルズとヌレイエフの血がどのように発展しているのかを紹介していきます。
サドラーズウェルズとフェアリーキング
サドラーズウェルズからガリレオ、フランケルと続くサイアーラインはヨーロッパで最も重要なラインと言っても良いでしょう。
しかもサドラーズウェルズの全弟フェアリーキングも種牡馬として凱旋門賞馬エリシオや5か国でG1を8勝したファルブラヴを出して成功しました。
サドラーズウェルズとフェアリーキング、この2頭を産んだ母はフェアリーブリッジという馬です。
このフェアリーブリッジについては名繁殖牝馬で間違いない訳ですが、この一族はそんな単純な話ではございません。
フェアリーブリッジの母スペシャル、この馬こそマジもんの世界的名牝な訳です。
スペシャル
スペシャルの代表産駒にはヌレイエフ、ナンバー、バウンド、キラウエアなどがおります。
ん?ヌレイエフ以外は良く知りませんけど!というアナタ。
某教育系ユーチューバー風に言うと ノンノンノン、侮らないでね!という所ですな。
この4頭がすべて同じ母から出ているという事実、すごいです。
血統ファンの間では、この4頭をまとめてスペシャル四天王と呼び、フェアリーブリッジのことをゴルベーザと呼びます。ウソです。
ヌレイエフ
まずはお馴染みヌレイエフ。
パントレセレブルやシアトリカルなどの後継種牡馬を出し、フランスリーディングサイアーも2回獲得した名種牡馬です。
父がノーザンダンサーなんで、サドラーズウェルズとは3/4同血となります。
血統ファンの間ではこの3/4同血クロスがあるとヌレサドと言います。
ヌレイエフ≒サドラーズウェルズの3/4同血クロス、ちぢめてヌレサド。
このクロスを見つけたら血統ファンはみんな「ヌレサド、ゲットだぜ!」と言います。ウソです。
そして種牡馬ではないんですが、ヌレイエフにとって最も重要な後継馬はG1を10勝した名牝ミエスクでしょう。
ミエスクは競争成績もすごいのですが、母としても初仔からいきなり名馬キングマンボを出す名牝ぶり。
キングマンボと言えば世界中に活躍馬がいる大種牡馬ですが、日本でもキングカメハメハ、エルコンドルパサーの父として有名です。
実はこの後の話でもヌレイエフ→ミエスク→キングマンボのラインは登場するのでちょっと覚えておいてください。
ナンバー
ナンバーはスペシャル牝系の中でも日本で馴染みがある馬です。
ナンバーの直仔からは日本で種牡馬として活躍したジェイドロバリーが出ています。
また子孫にはダートG1を5勝したゴールドドリームがいて、近年でも活躍馬が出てます。
こちらは2024年に産駒がデビュー予定です。
さて、このゴールドドリームもちょっと面白い血統なので見てみてください。
見ての通りスペシャル牝系な上に父ゴールドアリュールの母父がヌレイエフなので、スペシャルの4×5、ヌレイエフ≒ナンバーの3/4同血クロス3×4ですね。
血統ファンの間ではかなり期待する声が多い種牡馬です。
バウンド
バウンドは直仔に香港クイーンエリザベスⅡ世カップを勝ったアーキペンコがいます。
このアーキペンコの父がキングマンボなんですよね~。
血統表を見てみてください。
スペシャルの4×2であり、ヌレイエフ≒バウンドの3/4同血クロス3×1、、、、人間に置き換えるとドロドロの昼ドラが作れそうな案件ですな。
このアーキペンコも後の話でもう1度出てきますので覚えておいてください。
あとはバウンドの孫にブリーダーズカップクラシックを勝ったブレイム。
日本ではヴィクトリアマイルを勝ったエイジアンウインズがこの牝系です。
3連勝で一気にG1制覇してそのまま引退してしまったんですが、今思うと東京マイルでウォッカに競り勝つ牝馬って、、、どこのダイワスカーレットでしょうか。
当時はウォッカ取りこぼしたな~くらいにしか思ってませんでしたが、これは完全にエイジアンウインズがダイワスカーレットな件、でした。
いや、ちがうけど。
キラウエア
この牝系からもG1馬が何頭か出ているんですが、おもしろいのはタイムワープとグロリアスフォーエヴァーの全兄弟ですね。
タイムワープは2017年香港カップ勝ち、グロリアスフォーエヴァーは2018年香港カップ勝ちと兄弟で連覇しました。
この2頭の母はヒアトゥエタニティという馬で、5代母がキラウエア、6代母がスペシャルです。
下の血統表の緑囲みの部分ですね。
で、緑囲みキラウエアのところに「母:Special 祖母:Thong」と書いたんですが、このThong(ソング)がオレンジ囲みのMoccasin(モカシン)とLT.Stevens(ルーテナントスティーブンス)の2頭と全きょうだいなんです。
つまり、タイムワープとグロリアスフォーエヴァー兄弟の母ヒアトゥエタニティはモカシン=ルーテナントスティーブンス=ソングの全きょうだいクロス4×4·7です。
スペシャルの母ソングについての全きょうだいクロスを累進する配合になってます。
これで終わりじゃないですよ。
ここでタイムワープとグロリアスフォーエヴァーの血統表を見てみてください。(なぜかこの2頭がJBISさんに登録されてないので、netkeibaさんから血統表をお借りしました)
そう。
お気付きになりましたでしょうか。
この2頭の父はアーキペンコなのです。
あの昼ドラの帝王がここで登場します。
これで全きょうだいクロスは、モカシン=ルーテナントスティーブンス=ソングの6·4×5·5·8となります。
それでは弟のグロリアスフォーエヴァーが勝ち、兄のタイムワープが3着だった2018年の香港カップをどうぞ。
ちなみに2着に割って入ったのは日本の昼ドラです。じゃなくてディアドラです。
ちなみにタイムワープとグロリアスフォーエヴァー、どちらもセン馬です(泣)
祖先がやらかしたおイタのツケを払わされてしまったのでしょうか。
番外編
エルコンドルパサー
さて、そろそろ「エルコンドルパサーをガン無視する気か」という声が聞こえてきそうなので。
スペシャルと言えばエルコンドルパサーというくらい有名ですが、正確にはスペシャル牝系では無いので番外編としました。
エルコンドルパサーの牝系はスペシャルの全きょうだいリサデルです。
母のサドラーズギャルがスペシャル=リサデルの全きょうだいクロスを3×2とかなりキツく持っていて、そこにさらに母父ヌレイエフのキングマンボを父として産まれたのがエルコンドルパサー。
なのでスペシャル=リサデルの4×4·3ですね。
3分でわかるエルコンドルパサー。結構良い動画です。
エルコンドルパサーは3世代しか産駒を残せなくてサイアーラインを残すのは難しそうなんですが、牝馬のクリソプレーズから繋がっていく可能性は大いにありそうです。
ゴールドドリーム×マリアライトとかやってみてほしいなぁ。
この血統表を見て「サンデーサイレンスの3×3かぁ~」なんてボーっとしたこと言ってるとたぶんチコちゃんに叱られます。
エネイブル
あとはスペシャル牝系では無いですが、凱旋門賞連覇のエネイブルですね。
サドラーズウェルズの3×2。
あまり上品な配合とは思いませんが、こんなんでも普通に最強クラスの馬が出たりするので難しい。
エネイブルのベストレーストップ5の動画があったのでどうぞ。
今回の記事がおもしろいな、と思った方は平出貴昭さんの「覚えておきたい世界の牝系100」をオススメします。
今回紹介したサドラーズウェルズは、本の中ではスペシャルの母ソングの牝系として紹介されております。
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